![]() | 榎木津がこちらを睥睨していた。 私は全てを見透かされてしまうような気がして 目をそらした。 |
![]() | 悪戯を思いついた子どものような笑みが広がった。 ――これは大変なことになる。相手が。 |
![]() | まばゆい初夏の日差しに、うっとりと目蓋を閉じる。 どうやら昼寝することに決めたらしい。 |
![]() | 三十路を迎えた男が、ゴロゴロしている。 その光景を、ただただ美しいと思わせる何かが、 この男にはあるのだ。 |
![]() | 待ち合わせの場所に、既に榎木津は立っていた。 榎木津のまわりだけ、いつも映画のような雰囲気がある。 |
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![]() | 天衣無縫である。
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![]() | ――この眼だ。 視られている、と思った。 |
![]() | 「僕に任せろ。」
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![]() | 彼の目配せで、天候すらも 従うのではないかと 私には思えた。 |
![]() | なまじ造作が作り物めいている分、 榎木津礼二郎の沈黙には色がない。 多くの人から畏敬を集めるのは、 このためだろう。 |
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