京関心中考
 私自身、そこまで死にネタが大好きなわけではないのですが、
なんとなく、京関の心中について考えたものが以下の文章です。
そういったものに嫌悪を覚える方は、読まないほうが良いかと思います。
それでもいいよ、という方はスクロール。




















 秋彦と関口が、もしも心中することになったとして(不吉なかきだし)
どこでどういう手段を取るか、を考えました。
秋彦のことなので、ひとさまに迷惑がかかる(自殺と言う時点で沢山の人がなくんだが)
やり方は好まないだろう、ということで。
…樹海。

 持ち物は遺書と水だけ(死に水を取るため)。
刻々と飢えと消耗が二人をさいなむ。
案の定、関口はすぐに挫けて、腹が減っただの咽喉が乾いただの言い出す。
しょうがないから秋彦がはぐれない程度の距離から
ちょいちょいと食べ物を探してやる。
秋彦が先に逝く。
べそりべそりと、関口は泣いて。
君は馬鹿だと罵って、反駁の一向に響かない事実にまた泣いて。
「あー泣いたら腹が減った」といって秋彦の屍肉を食べて
「…帰るか」と、キノコを食べながらウロウロと歩いて、
戦時中の経験から森の中で数日を過ごすことは関口にとって難しいことではなく、
だらだらと歩いて、樹海の端に出てしまう。
そこで、ふと秋彦の遺書を出す。
あいつは、何を書いたのかな、なんて。

 手紙は
「君が此の手紙を見るころには、君はもう樹海を抜けたことと思う…」
という書き出しではじまっていて、遺書の内容は全て関口に向けたものだった。
関口が生き残ることも、屍肉を食すことも、樹海を出ようとすることも、
秋彦は読んでいて。
文末に
「僕はもう君の相談にのることが叶わない。ただ、最後に僕の我侭を聞いてほしい。
 僕を殺さないで呉れ。」とある。
関口は自分の遺書も出した。
そこには未練がましい謝罪が、雪絵や鳥口や木場や、さまざまな人に向けて書かれていた。
秋彦のことは一行もかかれていなかった。

 関口は泣きたいと思う。
でも、秋彦の死んだときにべそりべそりと沢山泣いたので、
とうに涙の価値は暴落していて、そんなものには用がなかった。
関口は踵を返した。樹海の森へ。
死にたいわけじゃないけれど、無性に秋彦のそばに行きたかった。
ふらりふらりと樹海に戻るが、特に標をつけたでなし。
秋彦の埋まる場所までたどり着けない。
毎日探して探して、段々と関口は疲れてしまった。
食べることもどうでも良くなった。
頭のくらくらする日が多くなり、立つことができなくなり、まばたきが難しくなり
「ああ、このままだと死んでしまうな」と思いながら目をつむり、
秋彦の肉声で
「僕を殺さないでくれ」という幻聴を聞いた。
「ごめんよ。君との約束を、また守れない。」
と思いながら事切れる。

っていうのを考えていました。
しかし心中は二人で一緒に死ぬことが目的だから
餓死などと言う緩慢で消極的な手段はとらないだろうという
根源的な失敗。

2008.04.22 「京関心中考」(2008.03.28のブログより)