原稿を届けに家を空けたら、おうちの前には、大きなカボチャが! どうやら差出人はエノさんの様子……。 「なんだか顔が描いてあって不気味だし、巨大なカボチャだな ……ていうかコレのせいで家に入れないじゃないか!」 実はエノさんはソレを狙って自分で担いで玄関先に放置したのです。 京極堂の飼い猫、柘榴はフンフンと帽子のきのこにご執心。 それ多分止めたほうがいいよ。 「とにかくこのカボチャをどかさないといけないな。おーい!京極堂!手伝ってくれよ」 「キミの頭はスポンジで出来ているのか?僕は肉体労働はしないと言っているだろう。」 ていうか関口くんは上半身裸で出歩いてるの? 仕事先に?あっちゃんへのアピールですか?捕まる前によしたほうがいいと思います。 え、作者の趣味?捕まる前によしたほうがいいと思います。 「これ1人で動かすのか……えーい!」 と、関口くんがカボチャに触れたそのとき! カボチャはますます巨大になり、驚いた関口をカボチャのつるが捕らえました。 身動きできない関口をよそにカボチャはなんと、馬車になってしまったのです。 変形が完了した馬車に、カボチャのつるは関口を押し込み、馬車の扉の鍵に幾重にも絡まりました。 馬車を叩く関口くん。 「京極堂!なんだこれ!出られない!」 本から目を離し、何かを言いかけた京極堂を尻目に カボチャの馬車はひとりでに走りはじめています。 もうもうと土煙を上げ、轟音と共にどこかへ疾走した馬車を 視界の端に小さく捕らえながら、京極堂は呟きます。 「この世には不思議なことなどないのだよ。それはカボチャだ。 ……とうせ行く先はエノさんのところだろう。先回りするとしよう。」 呟きは月の光に小さくこだましました。 肉体労働しないという痩せこけた男が、 どうやって疾走する馬車の先を行くのかと、 月が抱いた疑問は口にされないまま、夜闇に溶けていきました。 |